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生成AIのビジネス活用事例│業種別の最新動向と導入のポイント

2025.4.26

2025.4.26

生成AIのビジネス活用事例│業種別の最新動向と導入のポイント

近年、生成AI(Generative AI)がビジネスの場面で注目されることが増えてきました。文章や画像、音声などを自動で作れるこの技術は、業務の効率化はもちろん、新しい取り組みを始めるきっかけにもなっています。

 

この記事では、生成AIの基本的な考え方や、業界ごとの活用例、導入時に気をつけたいことなどをわかりやすく紹介していきます。新しい技術をどう取り入れるか、考えるきっかけにしてください。

生成AIとは何か?

生成AIとは、大量のデータを学習し、それをもとに新しい文章や画像などを自動的につくり出すAI技術のことです。これまでのAIが「仕分け」や「予測」などに使われていたのに対し、生成AIは自ら新しいコンテンツを生み出す点が特徴です。

 

代表的なサービスには、ChatGPTや画像生成のMidjourneyなどがあります。


生成AIをビジネスに活用したときの効果

生成AIは単なる流行ではなく、実際の業務改善や新しい価値づくりにつながる、実用的なツールです。ここでは企業活動での具体的な効果を見ていきます。

業務の効率化とコスト削減

生成AIを使って文章作成やデータ整理、画像生成などの業務を自動化し、作業時間や人手を大幅に減らすことが可能です。

 

パナソニック コネクトでは、社内向けの生成AIサービス「ConnectAI」を導入し、社員の業務を支援する仕組みを整えました。その結果、導入から1年で約18.6万時間の労働時間削減を実現しました。さらに、業務プロセスの見直しも進め、コスト削減と生産性向上の両立を目指しています。

新しい事業やプロジェクトの立ち上げを後押し

生成AIをアイデアづくりや業務効率化に活用することで、新たな事業やプロジェクトの立ち上げをスムーズに進められます。

 

オムロンでは、生成AI活用推進プロジェクト「AIZAQ」を立ち上げ、社員が自ら業務に生成AIを取り入れ、新しい働き方やサービス開発に挑戦する動きが広がっています。これにより、従来の業務改善にとどまらず、新たな事業機会の発見や、創造的な取り組みの芽を育てる土台が整いつつあります。

顧客対応の質を高める

生成AIはお客様一人ひとりに合わせた提案やサポートを、よりきめ細かくスピーディーに行うことにも効果的です。

 

たとえばLINEヤフーでは、社内向けの生成AIアシスタント「LY-ChatAI」を導入し、社内外で使用する文書やメールの作成、文案の修正、調査対応などを効率化しました。これにより、問い合わせ対応や顧客へのコミュニケーション品質を底上げし、全体の業務生産性を向上させています。


業種別の生成AI活用事例

生成AIは、さまざまな業界で実際に使われています。ここでは業種ごとの具体的な取り組みをご紹介します。

製造業

パナソニック コネクト

パナソニック コネクトは、業務の生産性向上を目指し、2023年5月に社内向け生成AIサービス「ConnectAI」を導入しました。

 

このサービスは、OpenAIの大規模言語モデル(LLM)をベースに、同社が独自に開発したものです。これにより、社員は文章作成や要約、議事録の作成、FAQ対応などを日常業務の中で利用できるようになりました。社内ポータルサイトを通じて誰でも簡単にアクセスでき、利用者は約1万人に上っています。

 

導入から1年間で、「ConnectAI」の活用による労働時間削減は累計約18.6万時間に達しました。社員が自主的に業務の中に取り入れるだけでなく、業務プロセス全体の見直しにもつながる成果を挙げています。

 

今後は、特定業務向けの活用事例の横展開やグローバル展開も視野に入れ、生成AIのさらなる活用拡大を図る計画です。(参照

オムロン

オムロンは、生成AIの活用によって新たな働き方や価値創出を目指し、2023年6月に全社プロジェクト「AIZAQ(アイザック)」を始動しました。この取り組みは特定の部署にとどまらず、社員一人ひとりが生成AIを日常業務に取り入れることを重視しています。

 

プロジェクトの中では、仕様書作成や資料作成、業務プロセス見直しといった具体的な活用が広がっています。社内ポータル「AIZAQサイト」を通じて情報提供や活用事例の共有も進められ、生成AIを取り巻くナレッジが着実に蓄積されています。

 

オムロンはこの活動を通じて、スマートで創造的な社会の実現に向けた新たな一歩を踏み出しました。(参照

小売業

セブン‐イレブン・ジャパン

セブン‐イレブン・ジャパンは、業務効率化とデータ活用力向上を目的に、Google Cloud上に独自の生成AI基盤「セブン-イレブン AIライブラリー」を構築しました。

 

社員が必要な情報に自然言語でアクセスできる環境が整えられており、店舗運営、商品企画、マーケティングなど幅広い分野で、社内情報の検索やデータ分析を迅速に行えるようになりました。

 

「セブン-イレブン AIライブラリー」の導入により、社員一人ひとりの意思決定スピードが向上しています。現場や本部での業務効率化が進んだほか、社内に蓄積された知見の活用も活発になり、組織全体の情報活用力が底上げされました。

 

今後も、この基盤を活かしてさらなる業務改善を図る方針です。(参照

パルコ

パルコは2023年のホリデーキャンペーンにおいて、生成AIを活用した広告制作を行いました。モデルを起用した撮影やスタジオ収録を行わず、生成AIによって人物ビジュアルや背景を作成し、広告内で使用するナレーションと音楽もすべて生成AIで制作しました。

 

この取り組みは、広告制作における新たな手法の提案として、社内外で注目を集めています。(参照①参照②

サービス業

ビズリーチ

ビズリーチは、企業の求人作成業務を支援するため、2025年4月に生成AIを活用した「求人自動作成機能」を正式にリリースしました。この機能では、企業が求める人物像や採用要件を入力するだけで、求人原稿のたたき台を自動生成できます。

 

従来、求人原稿の作成には専門知識や経験が必要でした。しかしこの仕組みにより、誰でも短時間で一定品質の求人作成が可能になりました。

 

「求人自動作成機能」は採用担当者の業務負荷を軽減するだけでなく、求人票の作成精度向上にも役立っています。また、ビズリーチはこの機能を通じて、企業の採用活動全体の効率化と質の向上を目指しています。(参照

LINEヤフー

LINEヤフーは2024年7月11日に、生成AIを活用した独自業務効率化ツール「SeekAI(シークエーアイ)」の全社本格導入を発表しました。

 

「SeekAI」は、膨大な社内文書データベースから、部門やプロジェクトごとに最適な回答を検索・表示するツールであり、自然言語処理技術であるRAG(Retrieval Augmented Generation)を活用しています。

 

従業員が質問を入力すると、登録された社内ワークスペースやデータベースから最適な情報を引き出し、端的な回答を得られます。

 

これにより社内規程やルール、問い合わせ先、技術スタック情報、顧客や取引先のコミュニケーション履歴などを効率的に把握することが可能になりました。テスト導入段階では、技術関連のナレッジ検索や、広告事業のカスタマーサポート業務において、約98%の正答率を達成しています。

 

LINEヤフーは「SeekAI」の導入により、社内の確認作業や問い合わせ対応にかかる時間を大幅に削減し、年間で70〜80万時間の業務時間削減を目指しています。(参照

IT・通信業

ソニーネットワークコミュニケーションズ

ソニーネットワークコミュニケーションズは2024年3月29日、高速光回線サービス「NURO光」のユーザー向けチャットサポート「NURO光 メッセージサポート」に生成AIを導入しました。この取り組みによって、ユーザーからの問い合わせに対し、自然な文章で迅速に回答できるようになりました。

 

従来はオペレーターによる直接対応が中心でしたが、生成AIの導入により、質問の意図や文脈を解析し、最適な回答を提示する対応が可能です。さらに、参考となるWebページや手順もあわせて提示することで、より正確な情報を提供できる体制が整いました。

 

生成AIによる応対は、ユーザーの同意を得た上で行われます。同意しない場合や、AI応答だけでは解決できないケースでは、引き続きオペレーターが対応にあたる仕組みも併用されています。(参照


生成AIを導入するときに気をつけたいこと

実際に生成AIを取り入れる際には、無理なく段階を踏みながら、リスクにも配慮して進めることが大切です。

導入の流れ

いきなり大きく取り組むのではなく、まずは試しに使ってみて、徐々に範囲を広げていくのがおすすめです。

 

  1. 目的と課題をはっきりさせる

     まず何のためにAIを使いたいのか、どこに困っているのかを整理します。

  2. 合ったツールを選ぶ

     自社の状況に合ったAIサービスを選びましょう。セキュリティ面や使いやすさもポイントです。

  3. 小さく始めて試してみる

     まずは一部の部署や業務で使ってみて、効果や課題を確認します。

  4. 社内で使うルールを整える

     AIを安心して使えるように、ガイドラインをつくったり、研修を行ったりします。

  5. 効果を見ながら改善していく

     使いっぱなしにせず、効果を測って必要に応じて調整していきましょう。

注意点

便利な一方で、生成AIには気をつけたいこともあります。以下のような点を意識しておきましょう。

 

  • 情報漏えいに注意

     外部に情報が送られる仕組みの場合、社内の機密データなどには要注意です。

  • 間違った情報が出ることもある

     生成AIの出す答えは正しいとは限りません。特に重要な場面では人の確認が欠かせません。

  • 使う人の知識に差が出る

     慣れていない人には難しく感じられる場合もあるため、使い方の共有や教育が必要です。


まとめ

生成AIは、業務を効率化するだけでなく、新たなビジネスを生み出す力も秘めています。この技術をどう活用するかは、これからの企業成長を左右する重要な要素になるでしょう。

 

まずは身近な業務から試し、自社に合った使い方を見つけてみませんか。