明るく

暗く

ビジネスコラム

営業のレスポンスが遅いと何が起きる?機会損失の原因と対処

2025.9.29

2025.10.1

営業からの返事が遅いと、問い合わせをしてきた相手先とつながれる確率や、その後の商談に進める確率が下がる傾向があります。

 

HBR(2011)やInsideSales/XANT(2021)の調査では、5分以内に返事をした場合は、6分以上〜60分後に返事をした場合より成果が大きく、最大で8倍の差が出ると報告されています(HBRでは30分を超えると不利になるとされています)。

 

そのため、「受付=すぐ」「本返信=営業時間内に60分以内」というルール(SLA)を社内で決めておき、守れない場合は通知や上長への連絡で対応するのが望ましいとされています。

 

新しい問い合わせへの最初の返事が遅れると、競合に先を越されることがあり、問い合わせ相手の期待も下がってしまいます。その結果、その後の日程調整も後ろにずれてしまうのです。

 

本記事では公開されている調査データをもとに、実際にすぐ試せる運用方法を紹介します。対象はBtoBのSaaS/ITや受託型ビジネスの営業・インサイドセールスチームです。

営業のレスポンスが遅いと何が起きる?

営業のレスポンスが遅れると、1.接触率が落ち、2.信頼が下がり、3.商談までの流れが長くなるといわれています。理想は5分以内の一次接触であり、60分を超えると成果が大きく落ち込む傾向があるとされています。

 

影響の全体像は以下の3点です。

 

  • 機会損失(接触・商談化の低下):5分以内と“6分超〜24時間”ではCVRが約8倍違う。
    ※この倍率は目安で、業界・商材・チャネルにより差があります。

解説:CVR(Conversion Rate)

問い合わせやリードが実際に商談につながる割合

  • 信頼低下(問い合わせ相手の不満の顕在化):「レスポンスが鈍い/スピード感がない」が54.3%で不満の最多。

  • プロセス長期化(調整の後ろ倒し):初動が遅れるほど予定が埋まり、関係者の意思決定が遅延。結果として商談の成約率も落ちる。

 

※HBR(2011)、InsideSales/XANT(2021)、SalesZine(2023)、Drift調査(目安)に基づく。

自社に置き換えるなら、直近3か月の初回応答時間(FRT)一次接触率を見直し、60分超の比率を確認してみましょう。

解説:FRT(First Response Time)

問い合わせを受けてから最初に返答するまでの時間

この全体像を踏まえ、次は理想のレスポンス時間SLAをわかりやすく説明します。

 

理想のレスポンス時間とSLAの作り方

調査では「5分以内が顕著に有利」という傾向が示されています。本記事では運用目安として、受付は即時・本返信は営業時間内60分以内(理想は5分以内)を一例として提示します。ここでいうSLA(Service Level Agreement:サービス水準合意)とは、社内で「どのくらいの時間内に問い合わせ相手に返答するか」をあらかじめ取り決めたルールのことです。

 

これを明文化し、遅れた場合は自動アラートや段階的なエスカレーションで対応する仕組みを

整えることが望ましいとされています。

最小SLA雛形(一次補完)

  • 受付=即時:自動返信で担当者名・対応予定時刻・緊急連絡先を明記。

  • 本返信=60分以内理想は5分以内に一次接触(電話/メール/チャットいずれか)。

  • 時間外=翌営業開始+120分以内:自動返信で案内(問い合わせ相手の期待と運用現実の折衷)。

  • 逸脱時の仕組み:10分未対応→マネージャーに通知/60分未返信→赤アラートと代行着手。

自社に置き換えるなら、SLA逸脱率一次接触までの時間をダッシュボードで確認できるようにしてみましょう。

数値ミニ試算:月100件で“何が何件”変わる?

調査によると、5分以内と60分後では商談数が最大8倍変わる可能性があるとされています。

その結果、粗利ベースでも大きな差が出ることになります。

 

ここでは、具体的な数値を使って「5分以内」と「60分後」でどれほど成果が変わるのかを見ていきます。仮に月間100件のリードがある場合の例を示します。

前提(例)

  • 月間リード数=100件

  • 商談化率=60分後:5%(例)/5分以内:×8 = 40% *1

  • 受注率=30%

  • 粗利=20万円/件

結果(表1)

パターン 商談化率 商談数 受注数 粗利
5分以内 40% 40件 12.0件 2,400万円
60分後 5% 5件 1.5件 300万円
差分 +35件 +10.5件 +2,100万円

※この数値はすべて目安であり、業界や商材によって差があります。自社データで置き換えて確認してください。

感度分析(表2)

60分後の商談化率 5分以内(×8)*1 商談数(5分以内) 商談数(60分後) 受注差分 粗利差分
3% 24% 24件 3件 +6.3件 +1,260万円
10% 80% 80件 10件 +21.0件

+4,200

万円

※この数値はすべて目安であり、業界や商材によって差があります。自社データで置き換えて確認してください。

自社に置き換えるなら、自社の直近6か月の実測CVRを60分後基準に当てはめ、5分以内の目標CVRを仮置きして試算してみましょう。

*1 「×8」とは、60分後の商談化率を基準とした場合に、5分以内で対応したときの商談化率がおよそ8倍になるという意味です。例えば60分後が5%なら、5分以内は40%と見積もる計算になります。

遅い原因と対処:原因×対策の対応表

営業のレスポンスが遅れる理由は、大きく分けて人手不足情報共有の遅延体制上の問題の3つがあるとされています。これらに対しては、通知ルール・当番制・返信テンプレート・権限設定といった方法で対応できます。

類型と対処

  • 人手不足:受付当番を1時間枠でローテーションし、ラウンドロビンで均等に割り振る

  • 情報共有遅延フォーム→CRM→Slack/メールを連携させ、初回応答時間(FRT)を自動記録

  • 体制の複雑さ・夜間自動返信で約束を明示し、翌営業+120分のSLAを掲示

監視と是正

  • 10分未対応:自動でマネージャーへ通知
  • 60分未返信赤アラートエスカレーション
  • 週次レビューFRT中央値・P90*2 、逸脱率一次接触率を確認

自社に置き換えるなら、FRTのP90*2 が何分かを出し、SLA60分を超えている要因を3つの類型に振り分けてみましょう。

*2 P90とは、全データのうち90%が収まる値です。例:「FRT P90=50分」であれば、90%のケースが50分以内に初回対応できていることを意味します。

すぐに使える応答セット

一次返信のテンプレートや通知ルール、当番表をまとめた仕組みを用意すれば、翌日からでも運用を始められます。ここでは一例を紹介します。自社の体制や問い合わせ相手の対応方針に応じて、調整してください。

一次返信テンプレ(3種)

  1. 見積依頼への返信
    件名:[受付完了] 〇〇様の見積依頼(担当:△△/対応予定:本日HH:MM)
    本文要素:受付番号/担当/対応予定/緊急連絡先/次アクション

  2. 資料請求への返信
    件名:[受付完了] 〇〇様の資料請求(担当:△△/対応予定:本日HH:MM)
    本文要素:受付番号/担当/対応予定/緊急連絡先/次アクション

  3. お問い合わせへの返信
    件名:[受付完了] 〇〇様のお問い合わせ(担当:△△/対応予定:本日HH:MM)
    本文要素:受付番号/担当/対応予定/緊急連絡先/次アクション

通知・エスカレーション

  • Webhook→CRM登録→Slack即時通知(担当者への通知)
    ※流れは会社や部署によって異なります。

  • 10分無反応→マネージャーに通知

  • 60分未返信赤アラート代行着手

当番表の回し方(9–18時|メール返信対応用)

  • 1時間×9枠で割り当て、不在時は代理タグで切替

  • 業務終了時に遅延事例を振り返り、翌日の割り当てを修正

シート例:担当/代理/開始/終了/メモ/遅延理由タグ

自社に置き換えるなら、当番表(1時間枠)一次返信テンプレを早めに共有し、チーム全体で確認してみましょう。

まとめ

営業のレスポンスが遅くなるほど損失は大きくなるといわれています。5分以内の一次接触/60分以内の本返信SLAとして決めておき通知・当番・テンプレで運用すれば改善につながります。数値はあくまで目安なので、必ず自社の記録を基に調整してください。

 

当番表と一次返信テンプレを早めに用意し、翌日から運用を始めてみましょう。

出典一覧